夏の食中毒を防ぐ3原則

夏の食中毒を防ぐ3原則は、洗う・低温保存・加熱処理

焼き肉チェーン店の集団食中毒事件をきっかけに、生の肉を食べる危険性が改めて浮き彫りになった。
若い人ほど肉を生で食べる習慣が根付いているが、「新鮮だから大丈夫」との誤解も少なくない。
家畜はもともと病原菌を持ち、完全に取り除くのは難しい。気温が上がる夏に向け、しっかり火を通し肉と野菜は一緒にしないなど調理の手順を守り油断しないことが、安全を確保する方法だ。

飲食店などの食材が原因で食中毒が起きた場合は、医師が保健所に届け出る。
厚生労働省のデータによると2010年は1254件が発生、約2万6000人の患者が出た。
死者を伴う大きな事件では、1996年に堺市で大きな被害が出た腸管出血性大腸菌O(オー)157が記憶に新しい。

今回の事件は、O157と同じ仲間に属するO111が原因。
食中毒を起こす菌と知られるカンピロバクターサルモネラなどと同じように、牛や鶏などの腸に生息する。
家畜では害を及ぼさないが、生肉を食べて人間の体内に入ると食中毒を起こす恐れがある。

食中毒に詳しい林哲也・宮崎大学教授は「健康な大人では感染しても症状が出ないケースもあるが、抵抗力の弱い高齢者や子どもはリスクが高い」と指摘する。子どもや高齢者は生肉を食べるのを避けるべきだというのが、専門家の一致した意見だ。

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食品の表示確認
食中毒の危険性が潜んでいるのは飲食店に限らない。
家庭の食事でも起こる。
食中毒を防ぐ原則は「菌をつけない」「増やさない」「殺す」の3つだ。

食中毒菌の検査を手掛ける伊藤武・東京顕微鏡院理事は「『つけない』は洗うこと、『増やさない』は低温で保存する、『殺す』は加熱処理することだ」と話す。
厚労省などは家庭でできる食中毒予防の具体的な方法を挙げている。

まずは食品の購入。肉や魚、野菜などは新鮮なものを選ぶこと。
消費期限などの表示がある場合は、それも確認する。
肉汁や水分が漏れないよう肉や魚はビニール袋などにそれぞれ分けて包む。買い物をした後は、寄り道せずにまっすぐ家に帰ろう。

家に着いたら、すぐに冷蔵庫へ。肉や魚はビニール袋で包んだまま中に入れる。
肉などを触った後はせっけんで手洗いするのも忘れずに。冷蔵庫内の温度はセ氏10度以下、冷凍庫は零下15度以下を保つ。
細菌が死滅するまではいかないが、増え方がゆっくりになったり、一時的に止まったりする。

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食事の下準備では、はじめにタオルやふきんを新鮮なものに交換し、ごみを捨てておく。
調理台の上も片付けてスペースを確保しよう。
そして生肉や魚を切った後は包丁やまな板を必ず洗い、そのまま生で食べる食品を切るのは避ける。
基本は洗ったうえ熱湯をかける。
肉用・魚用・野菜用など、複数の包丁とまな板を使い分けるとより安全だ。
生肉や魚は生で食べるものから離す、野菜をよく洗う、こまめに手を洗う――といったことも忘れないようにしよう。

調理では、食材を十分に加熱することが大切。
中心部分の温度がセ氏75度で、1分以上が目安だ。
ただカットした肉をつなぎ、形を整えた成型肉は、菌が肉の中まで入りこんでいる可能性がある。

東京都食品衛生調査会によると、実験でO157を入れたハンバーグを作り、フタをしないで、中心温度75度で1分間加熱した場合でも、菌は生存していた。フタをして片面3分ずつ焼くと、菌は死滅した。

肉を焼くはしは食べるはしとは別のものを使おう。
電子レンジを使う際は、均一に加熱できるようにする。
フタを使い、熱の伝わりにくい場合は途中でかき混ぜるとよいという。

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料理を放置せず
作った料理は室温で長時間放置せず、調理後2時間以内に食べる。
残ったらきれいな容器に入れ、冷蔵庫へ。温め直すときも加熱は十分に。目安は75度以上だ。
時間がたち、ちょっとでも怪しいと感じた場合は、思い切って捨てる。

手洗いが重要なのは、家族などに菌をうつさないため。
腸管出血性大腸菌は症状が出なくても便に混じり排せつされる。
ドアノブやおむつなどを介して子どもにうつる危険性がある。

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「生肉を食べ続けてきたが、これまで食中毒になっった経験はない」という人も多いだろう。
しかし「大震災と同じで次の日に起こるかもしれないと考えるのが大事」と伊藤理事はくぎを刺す。
食中毒菌が繁殖しやすい夏を前に、予防の基本はおさえておきたい。

◇            ◇

肉の生食、日本の食文化が下地
焼き肉料理は家庭にすっかり定着しているが、朝鮮半島がルーツとされている。
ユッケなど肉を生で食べる習慣が浸透した背景には、冷凍・流通技術の発達のほか、刺し身を好む日本の食文化が下地になっているようだ。

焼き肉の歴史に詳しい鄭大聲滋賀県立大学名誉教授によると、戦後に食堂などで焼き肉メニューが出され、外食産業の発展とともに日本人の間に広がった。
併せてユッケやレバー刺しなども定着した。
もともと日本人は魚を刺し身で食べており、肉の生食も浸透しやすかったという。
食中毒を受け、鄭名誉教授は「肉の取り扱いルールをきっちり決めたうえで、食文化を守るべきだ」と主張する。

東京都が20歳以上の1000人を対象に2009年に実施した調査でも、3カ月以内に肉を生で食べたことのある人は40%に達した。年代別では20代が53%、30代が47%など、若い人ほど生で食べている割合が高かった。
肉の種類は牛肉、鶏肉、馬肉の順。わずかだが豚肉という回答もあった。

出典 日経新聞・朝刊 2011.5.28 (日経プラスワン2011年5月28日付)
版権 日経新聞

<私的コメント>
女房と肉の生食について話し合っていたときのこと。
私「欧米では肉を生でなんか食べないよね」
女房(即答)「あるよ。タルタルステーキ

さて、韓国はともかく、食文化に長い歴史のある中国ではどうなんだろう、と以前から疑問に思って来ました。
私の知る限り、魚以外の生食はあまりないように思うのですが知っている方は教えて下さい。


今回の記事の最後の肉の生食、日本の食文化が下地
「焼き肉料理は家庭にすっかり定着しているが、朝鮮半島がルーツとされている。ユッケなど肉を生で食べる習慣が浸透した背景には、冷凍・流通技術の発達のほか、刺し身を好む日本の食文化が下地になっているようだ。」
期待して読んだのですが、この書き方では「焼き肉料理な朝鮮半島がルーツ」ということはわかるのですが、「肉の生食」も朝鮮半島から入って来たのか、「日本で花が開いた」のか核心的なことが伝わりません。
何か、はぐらかされたような思いです。
知りたいのは韓国より日本の方が「肉の生食」が盛んなのですか。
そこんところ鄭名誉教授、よろしくお願いしますよ。


<それだけの話ですが>
昨日のキリンカップの日本対ペルー戦のサッカー。
エバという選手に交代して出て来た選手の名がチロケ。
他にも面白い名前の選手がいるかと思いましたが、他の選手の名前は期待はずれ(?)でした。



他に
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