なぜ、遅く食べると太るの?

「夜遅くに、ご飯を食べると太るよ!」というダイエットの格言(?)があります。
このことに科学的な根拠はあるのでしょうか?

夜遅い食事は太る原因。でもなぜ?

「夜遅く食べると太る」ことは、多くの人は知っています。
ダイエットをする人にとって「夜遅く食べない」ことは鉄則ですが、帰宅が遅い人にはなかなか難しいことです。

でもどうしてなのでしょうか?
食べてすぐに寝てしまうのでエネルギーが消費されず、脂肪としてため込まれるためというのが理由の一つです。

さらに、この「夜遅く食べると太る」ことが、分子レベルで科学的に裏づけられたのです。
そのカギを握るのが、DNA(遺伝子)に結合しているたんぱく質、BMAL1(ビーマルワン)。
このBMAL1はそもそも体内時計をリセットするタンパク質です。
人の体内時計は脳にあって、そのリズムは1日約25時間と言われていますが、地球の一日は、24時間で、余った1時間をこの体内時計が、矯正してくれているのです。
(体内時計は、朝日を浴びる事でリセットされて正常に機能するので、朝日を浴びずに不規則な生活をしている人には健康的な体内時計は、あてはまりません)

このBMAL1が、脂肪細胞に脂肪をため込む働きをする事が最近の研究の結果で判ってきました。


夜10時から急増!BMAL1
BMAL1の主な働きは、脂肪をつくり、ため込むための酵素を増やしたり、脂肪を分解してエネルギーに変えるための酵素を減らすようDNAに対し働きかけること。
つまりBMAL1は脂肪をため込ませる“司令塔”なのです!
だから、BMAL1の量が多いほど脂肪がたまりやすいことになります。

BMAL1は人の体内リズムと密接な関係をもち、時間帯によって増減することがわかっています。
マウスを使った実験で体内のBMAL1の量を確認したところ、午後10時ごろから急増し、午前2時~4時ごろピークを迎えます。
そして、午前6時ごろから減り続け、午前6時~午後3時ごろに少なくなることがわかりました。
(その差は約20倍にも上る!)
BMAL1の量が最大となる深夜は、指令機能もピークに達し、脂肪をため込みやすい状態になっているのです。
(1日の間にBMAL1の量が変化する為、食事をする時間帯によっても脂肪を溜め込みやすい時間帯が発生する!)
このメカニズムがヒトにも当てはまるなら、「夜遅く食べると太る」ことは分子レベルで証明されたことになります。
(夜食はやめたほうがよい!)


朝型生活のすすめ
脂肪をため込ませるBMAL1なんて迷惑、なければいいのになんて思っていませんか?
でもそうはいきません。
現代は飽食の時代といわれますが、人類の長い歴史のなかからみればそれはごく短い期間、しかもほんの一部の人間が経験していることにすぎません。
長い間飢えと戦ってきた人間にとって、夜中、寝ている間に脂肪を積極的にため込み、昼間それをエネルギーに変えて活動するという仕組みは、生き延びるために大変重要かつ合理的な役割を果たしてきました。
 
ところが、現代の日本では、夜遅い時間に高カロリー・高脂肪の食事をとるような生活パターンが習慣化し、脂肪がどんどんため込まれるような状況になっているのではないでしょうか?

また、朝になるとBMAL1の量が減るのは、太陽光線と関係があるとみられています。
だからBMAL1を減らすには、朝日をしっかり浴びることも重要。

ダイエットのためには、まず夜遅い食事を避けること、そして生活リズムを朝型にすることです!

ただし、BMAL1だけが脂肪をため込ませるわけではありませんし、BMAL1を減らしたからといって脂肪がすぐに減るわけでもありません。
ダイエットしたい人、肥満が気になる人は、朝型生活を心がけるとともに、適度な運動を習慣にすることをおすすめします。


脂肪をため込まないために生活習慣の改善を
1. 生活リズムを朝型に。朝食はしっかり食べ、夕食はなるべく午後8時くらいまでに済ませましょう。
2. 仕事などでどうしても夜型になってしまう場合、夕食や夜食は軽めに。低カロリー・低脂肪で消化吸収のよいものをとりましょう。
3. 毎日の適度な運動を習慣づけましょう。

「ダイエットに15時(午後3時)のおやつはOK、でも夜食は厳禁!」
「BMAL1のリズムに合わせて食事をすれば肥満予防につながる」
「BMAL1のもっとも増えるのは午前10時~深夜2時」
「BMAL1のもっとも減るのは午後2時~4時」


参考
朝日新聞・朝刊 2012.2.11