O104、欧州12カ国に拡大

きょうは、ドイツを中心に欧州で猛威を奮っている腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症に関する記事を取り上げました。
日本で同様のことが起こったら、と思うだけでも怖くなりますね。


O104、欧州12カ国に拡大 生野菜巡り貿易問題にも

ドイツを中心に発生した腸管出血性大腸菌O(オー)104の感染拡大が止まらない。
患者は欧州12カ国に広がり、22人が死亡。
米国にも飛び火した。ロシアが欧州連合(EU)からの生野菜輸入をストップするなど、貿易問題にも発展している。

      ◇

感染の中心地はドイツ北部だ。
5月中旬から血の混じった下痢などを訴える患者が増加。
北部の大都市ハンブルクブレーメンのほか周辺地方にも患者が広がり、同24日に死者が3人出たことが報じられた。
いずれも成人女性だった。

感染拡大は止まらない。
世界保健機関(WHO)などによると、今月5日までにドイツの死者は21人にのぼり、スウェーデンでも1人が死亡した。
大半が、溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症していた。
患者数は2千人を超え、デンマーク、フランス、オランダなど欧州12カ国のほか米国にも広がっている。
ほとんどがドイツ北部を最近訪れた人だという。

これまでの調査で、今回のO104は毒性と感染力が強く、抗生物質も効きにくい、これまでに知られていないタイプだという。

だが、感染源や感染経路は謎のままだ。

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5月25日にはドイツの研究所が生野菜を控えるよう呼びかけた。
26日にはハンブルクの保健当局がスペイン産キュウリから菌が見つかったと発表。
だが、その後の検査で、スペイン産キュウリは「シロ」と判明した。

独メディアは今月4日になって、5月6~8日に150万人が訪れたハンブルクの港祭りと、同月12~14日に食事をした17人が感染、1人が死亡した北部リューベックのレストランについて、感染を広げる元になった可能性を報じた。

ただ、港祭りについては市当局が否定。
リューベックのレストランでは、三つの異なる旅行グループが感染しているが、レストラン店主は従業員や店に異状は見つかっていないと主張している。

EUは4日、感染源を突き止めるため、ドイツに専門家を派遣する準備に入ったことを明らかにした。

週末になって感染拡大のペースが落ちているとの報道もあるが、ドイツ北部では引き続き生野菜を控えるなど、警戒態勢だ。

出典 asahi.com 2011.6.6                      
版権 朝日新聞社

<私的コメント>
もちろんドイツ北部に集中しているということが感染経路解明の鍵でしょうが、感染拡大阻止が緊喫の課題です。
中にはバイオテロを想定している方々もみえるかも知れません。
原因ばわからないというのが、食べ物を介した感染だけに何より怖いです。

当院でも以前から、食中毒の方に検便をするとしばしば病原大腸菌が見つかります。
検査センターからは、O-○×△といった〒番号か市外局番のような数字のついた起炎菌名(感染の原因となった細菌)が報告されます。

しかし、どの菌が毒性が強いのか調べてもなかなか分かりません。

さて、文中に「抗生物質も効きにくい」と書かれていますが、病原大腸菌の治療での抗生剤の投与については溶血性尿毒症症候群(HUS)を誘発するといった考えもあり、抗生剤使用の要否については意見が分かれます。


<関連記事>
大腸菌感染「峠は越えた」、独保健相
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2805117/7317142?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics
【6月9日 AFP】ドイツのダニエル・バール(Daniel Bahr)保健相は8日、腸管出血性大腸菌(EHEC)が引き起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)の大流行は峠を越えたとの見方を示した。

中略

HUSによる死者は8日までに少なくとも25人、感染者は2600人以上に達している。
バール氏は、新たな感染者数は減少傾向にあるとするRKIの統計を引き合いに出し、「危険がゼロになったとは言えないが、国家レベルでは最悪の事態は去ったと楽観視できる根拠はある」と述べた。

だが、依然として感染源は特定できていないとして、トマト、レタス、キュウリ、モヤシを生で食べることは控えるよう国民に呼びかけた。

RKIは、感染者数の減少がこれらの野菜の買い控えに関連しているかは不明だとコメントしている。(c)AFP/Deborah Cole


<関連サイト>
溶血性尿毒症症候群
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10190700.html

溶血性尿毒症症候群
http://hobab.fc2web.com/sub6-HUS.htm

腸管出血性大腸菌
http://hobab.fc2web.com/sub4-EHEC.htm
■本邦で確認された、ベロ毒素を産生する大腸菌のO血清型は、O1、O2、O18、O26、O103、O111、O114、O115、O118、O119、O121、O128、O143、O145、O157、O165、がある。
(私的コメント;まるで年賀葉書の当選番号みたいです。こんな「あたり」は要りませんね。)
O157感染症による下痢症に対しては、使用する抗生剤は、静菌的に作用するホスホマイシン(FOM)などが、推奨されている。
これは、殺菌的に作用する抗生剤は、死んだ菌から、ベロ毒素が、放出(遊離)され、溶血性尿毒症症候群(HUS)等の合併症を、増加させる危険性が、考えられる為。
■抗生剤の使用期間は、3~5日間とし、漫然として、長期投与しない。
■欧米での研究結果によると、抗生剤(抗生物質)の投与は、HUSの発症を予防しないが、HUSの発症を誘発することはない(下痢発症後7日以内に抗生物質の内服を開始しても、HUSの発症は有意に低下しない)。

他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
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(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
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(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
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(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。