休み明けの体調不良

休み明け、なぜか体調不良

平日は朝が早くて睡眠不足ぎみ。
せめて週末ぐらいはたっぷり寝ようと考えているひとは多いはず。 しかし、よく寝たつもりなのに体調がすっきりしない。
特に休み明けは辛いことはないだろうか。
週末の朝寝坊は「時差ボケ」という意外な落とし穴を生むという。

*週末の朝寝坊で「時差ボケ」
そもそも時差ボケとは何か。
体には約24時間周期の体内時計が備わっており、睡眠や覚醒、血圧やホルモン分泌など様々な働きを調節している。
時差の大きい地域に飛行機で行くと、体内時計と生活時間との間にズレが生じるなどし、眠気や食欲不振、集中力低下といった症状が起きやすい。
 
体内時計乱れ
時差ボケは海外旅行だけでなく、普段の生活でも睡眠時間の乱れで起こることがある。
夜更かしや朝寝坊、長時間の昼寝などで体内時計が乱され、時差ボケのような症状を招く。これを『社会的時差ボケ(Social Jet lag)』と呼び、注目されている。
 
典型的なのが夜勤など交代勤務だ。
交代勤務者は睡眠障害だけでなく、がんや肥満、高血圧、糖尿病、うつ病などのリスクが高まると報告されている。
世界保健機関(WHO)の下部組織の国際がん研究機関による発がんリスクのランク分けでも、「交代勤務は発がん性があると考えられる」というレベルに位置づけられている。
 
交代勤務ほど深刻ではないが、夜型生活や週末だけの朝寝坊も、社会的時差ボケを起こしやすい。
頭の働きが低下したり、昼間の眠気や抑うつ傾向が増したりするという報告もある。
仕事の能率や学業成績への影響も侮れない。

問題は大人だけに限らない。
1~5歳児での検討でも、週末朝寝坊の影響が思った以上に大きかった、という研究もある。
 
生活パターンを「極端な夜型」「次に夜型」「やや夜型」「早寝早起き型」「平日は早寝早起きで週末のみ朝寝坊型」の5グループに分類して検討した報告がある。
このうち「朝の不機嫌さ」や「体調不良」「風邪の引きやすさ」など不調の度合いが最も大きかったのが、極端な夜型だった。
 
朝寝より早寝 夜更かし控え、朝食は定時に
症状が最も少なく健康的だったのが、早寝早起き型だった。
一方、平日は早寝早起き型と同じ理想的な生活を送っているにもかかわらず、週末朝寝坊型では、朝の不機嫌さや風邪の引きやすさの程度が、やや夜型よりも高かった。
 
どのグループでも、週末は平日に比べ起床時刻や朝食時刻が遅くなる傾向があったが、週末朝寝坊型は特にズレが大きかった。
朝食時刻のズレが目立ち、11時ごろに朝昼兼用のブランチを取る家庭もあった。
 
実はここに健康を害しがちな要因が隠れている。
朝食は体内時計のズレを修正する重要な役割を担っている。
週末朝寝坊型は、朝寝坊に加え、遅い朝食という習慣で、体内時計の乱れが一層進むと考えられる。
夜型生活で社会的時差ボケが進むことは容易に予測されるが、たった2目の週末朝寝坊も体内時計を乱してしまう。

<私的コメント>
以上は、大人ではなく1~5歳児での検討の結果です。
 
この調査では母親についてもいくつか質問している。
偏食や肥満、ストレスが最も少なく、世帯収入が最も高かったのったのが極端な夜型で、肥満度を表すBMI値(体格指数)も最も高かった。
 
極端な夜型に次いでBMI値が高く、肥満傾向が見られたのが、週末朝寝坊型の母親だった。子供だけでなく、母親にも社会的時差ボケの影響が出ていると考えられる。

<私的コメント>
母親にも常勤やパートなどの仕事をしている人や専業主婦といったように生活様式が様々です。
また子供の人数も影響を与えそうです。
1~5歳児と、そういった子供を持つ母親という限定された対象での研究ということを認識する必要があります。

では、週末はどのように過ごすといいのか。
一番いいのはいつもと同じ時間に寝て起きることだ。
でも、休みの日くらいゆっくり寝ていたいと思う人も多い。
そういった場合には、せいぜい1時間以内のズレですむように努力したい。
この程度なら時差ボケがひどくなることはまずない。
 
週末はどうしても夜更かしになりやすい。
睡眠時間を確保したいなら、朝寝坊するのではなく、なるべく早く寝るようにすると時差ボケ予防にもなる。

朝の光と食事でリセット
体内時計は24時間よりも少し長めにできている。
このズレを修正してくれるのが、朝に浴びる光と朝食だ。
体内時計は大きく2種類ある。
脳の視交叉上核という場所の親時計と胃や肝臓など各臓器にある子時計だ。
親時計は光刺激を受けてリセットされるが、子時計は食事によって調整されるという。
(全身の細胞一つ一つに「時計遺伝子」がある)
長い絶食後に取る朝食は、体内時計のズレを修正する働きが特に強い。
このため朝食を抜いたり、食べる時間が遅くなったりすると時差ボケ症状を招く。
これを防ぐには、起床後1時間以内に朝食をとることが大切となる。


まとめ
● 起きたらカーテンを開けて光を浴びる → 脳の親時計をリセット
● 起きて1時間以内に朝食を取る → 胃腸、肝臓などの子時計をリセット
● 休日でもブランチ(朝昼兼用食)にしない
● 休日もできるだけ平日と同じ就寝・起床時間を守る。
 休日前の夜更かしはやめよう(平日とのズレは1時間以内にとどめる)
● 睡眠不足だからといって、極端に長く寝過ぎない


出典
日経新聞・朝刊 2015.10.24(一部変更)